日本版SOX法に熱心な会社であることは、IR戦略上も重要なのですか?

 

Q.日本版SOX法に熱心な会社であることは、IR戦略上も重要なのですか?

 

A.あらゆる分野で格付けがなされる時代となっていますので、日本版SOX法の会社格付けランキングが、発表される日もそう遠くはないかもしれません。

会社の内容や業績が重要であることはいうまでもありませんが、格付けで上位となる会社はIRや時価総額に影響するのではないかと思われます。例えば、環境報告書というものがあり、強制ではないのに作成する大きな理由は、環境報告書を作成していることで環境に熱心な会社とみなされ、環境格付けが上がることにあるのではないでしょうか。

ISOについても同様ですが、国内だけならすぐにあの会社と分かるものの、世界から日本の企業を評価する際には、格付けが高い会社であるか否かというような判断方法をします。したがって、IR戦略において、日本版SOX法に熱心な会社であることは不可欠です。

 

また、経営者が自ら、内部統制は本当に重要であり、内部統制によって自身の責任も免責される場合があるということを認識してその気にならなければ、日本版SOX法の成功はないといっても過言ではありません。上場している会社についても、経営者が日本版SOX法を全く理解していない会社が多数存在しています。「お金にならないから、できるだけやりたくない」、「売上げが上がらないものに、どうしてこんなにお金をかけなければならないのか」という考えの社長もいます。このような社長の下では、内部統制のセクション等が取り組もうといくらいっても限界があるでしょう。

企業会計審議会の内部統制部会の部会長である八田進二先生も、このことについて「大切なのは経営者が経営とは何かを考え、かつ信頼し得るディスクロージャーを担保すること」、「文書化すること自体が本来の目的ではありません」と述べています。八田先生も大変苦労したそうです。勉強会の参加者がほぼ担当者のみであり、経営者が参加しないとのことでした。しかし、経営者が何でも「オールマイティーにできる」ことが、内部統制の一番の限界点です。「何か事件が発生すると、これまでは必ず経営者の首が飛んできた。メディアはそれで留飲が下がるかもしれない。直接は事件に関連していない有能な経営者を失うことは社会的な損失です」。

内部統制の仕組みが整っていなければ、経営者が責任をとらなければならないのはいかなる場合で、とらなくていいのはいかなる場合であるかということが、はっきりしません。内部統制があることは、経営者にとっては「経営責任も正確に明確化できる」ということです。内部統制がなければ、日本では、経営者は記者会見で謝罪して辞めるということになってしまいます。本来なら辞めなくてもいい場合もあり、担当者の些細なミスで頭を下げて辞めているのも不条理です。内部統制が自身を守ることにつながると、とりわけ新興市場の中小、中堅のオーナー企業の経営者は認識する必要があります。

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