‘会社法’

「別表の売掛金」と「貸借対照表の売掛金」の不一致について教えてください

 

例えば、売上金額が約10億円、所得金額は毎期数千万円を計上している金属材料の卸売業をおこなう同族会社があるとします。売上先が多数に上り、売掛金の管理がむずかしく未入金先もあります。問題となっているのは、貸借対照表の売掛金の金額より貸倒引当金の別表に記載された個別評価債権の売掛金の金額のほうが多いので、貸倒引当金の繰入額が過大になっているのではないかということです。また、個別評価債権40,000千円に対して20,000千円の貸倒引当金を計上していたが、反面調査の結果、個別評価債権は30,000千円であるから繰入限度額は15,000千円であり、差引き5,000千円が繰入過大となっており修正申告する必要があるようです。
なぜ貸倒引当金の別表に記載された個別評価債権の売掛金の金額が貸借対照表の金額より多いのか、例えば、品物を買ってもらっていたお得意さんの入金が途絶えがちになってしまい債権償却特別勘定を計上、その後、売掛金の一部が入金されて営業部が売掛台帳に入金処理したようだが、申告書を作成する担当者への連絡が徹底していないため貸倒引当金の別表上の売掛金の金額が以前のままというケースが考えられます。
しかし、申告書の別表に記載している売掛金の金額が実際の売掛金額より多いので、正しい売掛金額を基準にして再計算するしかないわけです。別表には個別評価債権として40,000千円記載し、その50%の20,000千円を貸倒引当金として計上していましたが、実際の個別評価債権金額は30,000千円なので橾入限度額は15,000千円であり、差引き5,000千円が繰入過大となっているということです。よって、5,000千円修正申告しなければなりません。こうした事実関係に加えて、法律的な根拠として次のような説明ができます。
・貸倒引当金は、法人税法第52条の規定に基づき、個別評価金銭債権の弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額しか損金算入は認められない。
・政令で定めるところとは、調査したところによると施行令96条1項第3号のホに規定されているイからニに準ずる事由、すなわち会社更生法や民事再生法、破産法等に基づく更生手続き開始の申し立てに準ずるものとして定められている事由、つまり法人税法施行規則25条の3に規定する手形取引停止処分に該当するため、当該個別評価金銭債権の百分の五十に相当する金額しか損金算入は認められない。
したがって、5,000千円が過少申告となっていると判断できるわけです。しかし、法人税法施行令96条の1項二号を適用することで損金算入が求められるとも考えられます。規定を見ると、債務者が長期間債務超過であったり、事業に好転の見込みがなかったり、経済事情の急変などにより多大な損害が生じていたり、個別評価金銭債権の一部の金額につき取り立ての見込みがないなどの場合は、その金額を損金の額に算入できると書いています。これに該当し、さらに、この売掛金の発生は十数年前のものであること、この取引先は完全に消滅したわけではなく細々と営業しているためなかなか貸倒損失としにくいこと、しかしながら社長が高齢のため、事業が好転する見込みはないこと、にもかかわらず自宅があるためまったく取り立ての見込みがないわけでもないことなど、必要な補足説明を加えながら主張すること。その上で、確かに別表に記載した売掛金の金額は間違っていたが、実際問題として別表に記載した貸倒引当金の金額を、取立て見込みのない金鎖と解釈して損金算入できると考えてもいいのではないでしょうか。
こんな問題にしないためにはどうすればよかったのか。必要なことは、損益計算書、貸借対照表に記載された各勘定科目の数字と別表に記載された科目、数字を必ず一つずつ突合すること、申告書に添付する内訳明細書に記載している数字とも確実に突合し、間違いのないようにすることです。こんな簡単なことかと思われるかもしれませんが、小さな仕事を怠けず着実に行うことが結果として、税務調査の正しい受け方、上手な受け方につながります。むずかしいと思うことは誰もが十分に注意しますが、こういう簡単なことはおろそかになるものです。この気の緩みから水が漏れていくものなので、ぜひ心に留めておいてください。この事案にかかわらず、一般的にいえることですが、当局の指摘に対して何となく漠然と考えていても、いい考えは何も浮かんできません。答えは自分の頭の中からではなく、条文の中から探しましょう。税務上のことは税法の条文に即して考えるということが必要です。条文の頭で考え、条文の言葉で話すということが必要になります。以下に参照した条文を載せておくので確認しましょう。
法人税法(貸倒引当金)
第五十二条 内国法人が、会社更生法の規定による更生計画認可の決定に基づいてその有する金銭債権の弁済を猶予され、又は賦払により弁済される場合その他の政令で定める場合において、その一部につき貸倒れその他これに類する事由による損失が見込まれる金銭債権(以下この条において「個別評価金銭債権」という。)のその損失の見込額として、各事業年度において損金経理により貸倒引当金勘定に繰り入れた金額については、当該繰り入れた金額のうち、当該事業年度終了の時において当該個別評価金銭債権の取立て又は弁済の見込みがないと認められる部分の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額(略)に達するまでの金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。
施行令九十六条一項二号
二 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する個別評価金銭債権に係る債務者につき、債務超過の状態が相当期間継続し、かつ、その営む事業に好転の見通しがないこと、災害、経済事情の急変等により多大な損害が生じたことその他の事由が生じていることにより、当該個別評価金銭債権の一部の金額につきその取立て等の見込みがないと認められる場合(前号に掲げる場合を除く。)当該一部の金額に相当する金額
施行令九十六条一項三号
三 当該内国法人が当該事業年度終了の時において有する個別評価金銭債権に係る債務者につき次に掲げる事由が生じている場合(略)当該個別評価金銭債権の額(当該個別評価金銭債権の額のうち、当該債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額及び担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を除く。)の百分の五十に相当する金額
イ 会社更生法又は金融機関等の更生手続の特例等に関する法律の規定による更生手続開始の申立て
ロ 民事再生法の規定による再生手続開始の申立て
ハ 破産法(平成十六年法律第七十五号)の規定による破産手続開始の申立て
二 会社法の規定による特別清算開始の申立て
ホ イからニまでに掲げる事由に準ずるものとして財務省令で定める事由
財務省令=法人税法施行規則
(更生手続開始の申立て等に準ずる事由)
第二十五条の三 令第九十六条第一項第三号ホ(貸倒引当金勘定への繰入限度額)に規定する財務省令で定める事由は、手形交換所(手形交換所のない地域にあっては、当該地域において手形交換業務を行う銀行団を含む。)による取引停止処分とする。
施行令九十六条四項
4 内国法人の有する金銭債権について第一項各号に規定する事由が生じている場合においても、当該事由が生じていることを証する書類その他の財務省令で定める書類の保存がされていないときは、当該金銭債権に係る同項の規定の適用については、当該事由は、生じていないものとみなす。
施行令九十六条五項
5 税務署長は、前項の書類の保存がない場合においても、その書類の保存がなかったことについてやむを得ない事情があると認めるときは、その書類の保存がなかった金銭債権に係る金額につき同項の規定を適用しないことができる。

Q.会社を設立し、初年度の決算業務を行っているところですが、思ったより利益が出て、税金を支払う用意をしなくてはなりません。開業費については、5年間で均等に償却するそうですが、節税できる方法はありませんか?

 

A.開業費(会社設立後、営業開始までに支出した開業準備のための費用のことです。以下同じです)は5年間で償却するのが原則ですが、任意償却も認められていますので、初年度の税負担を抑制したいのであれば、その全額を損金に算入するといいと思われます。

開業費は、会社法における繰延資産に該当します。繰延資産というのは、会社が支出する費用であって、その支出の効果が1年以上に及ぶもののことです。合理的な期間に分散して償却を行い、その間は資産として計上するのが原則です。
繰延資産の償却額は、次の式により算出します。
繰延資産の額×その事業年度の月数(支出事業年度は支出日より期末までの月数)/支出の効果の及ぶ期間の月数
ただ、開業費については任意償却を選択することもできますので、初年度に全額を損金に算入したり、赤字の間は償却を行わずに黒字になった6年目や7年目に一括して償却したりすることも可能です。すなわち、いつでも、開業費の額の範囲内で自由に償却を行うことが認められています。設立初年度に利益が発生している場合、一般的には一括して損金に算入します。このことにより、初年度における税負担を抑制することが可能です。
ちなみに、創立費(会社の負担に帰すべき設立費用のことです)についても、開業費と同様に任意償却が認められています。

Q.会社を設立して1年目です。先日、取引先の会社より請求書がメール添付で送られてきましたが、そのメール自体を削除してしまったようです。請求書は保存しておく必要があるでしょうか?

 

A.
1.保存期間
会社にある各種書類の保存期間については、会社法や法人税法、労動基準法等により規定されています。会計に関わる書類の保存期間を述べます。
決算書類(貸借対照表、損金計算書等)や帳簿(総勘定元帳、現金出納帳、売上帳、仕入帳、固定資産台帳等)については、その保存期間が会社法によって10年と規定されていますので、税法上はこれらの書類の保存期間が7年とされているものの、10年間保存する必要があります。
また、証憑書類(領収書やその控え、預金通帳、有価証券売買計算書、請求書、注文書、見積書等)については、会社法により事業に関する重要な資料に限って10年間保存する必要がありますが、それ以外のものは保存期間が税法上7年とされています。
なお、平成20年4月以降終了事業年度に発生した欠損金については、繰越期間が7年より9年に延長されています。欠損金の繰越控除の適用を受けるなら、欠損金が発生した帳簿書類を保存している必要があることから、保存期間も延びます。

2.保存方法
帳簿書類の保存方法は、原則として紙による保存です。パソコンによって作成した書類は、プリントアウトした上で保存することになります。ただ、事前に税務署に対して申請書を提出することにより、一定の条件に該当する電子データによって保存することも認められています。
ちなみに、期限が過ぎた書類の処分方法については、用心することなく通常のゴミと共に出すと、問題となる可能性があります。したがって、シュレッダーにかけるか、溶解処分を行ってくれる業者に依頼するといいと思われます。

Q.医療法人の役員給与を損金に算入することが可能でしょうか?

 

A.医療法人が役員に支給する給与のうちで一定のものに関しては、不相当に高額な部分の金額を除いて損金に算入することが可能です。
また、退職給与は、原則として、不当に高額な部分の金額を除いて損金に算入することが可能です。

1.税制改正前の役員給与の取扱い
平成18年度の税制改正より前は、役員の給与が「役員報酬」(月給のような定期の給与)、「役員賞与」(臨時的な給与)、「役員退職給与」に分類されていました。法人税法では、役員報酬や役員退職給与は原則損金に算入、役員賞与は損金不算入と規定されていました。ただし、役員報酬や役員退職給与のうち不相当に高額な部分は損金不算入、役員賞与のうち使用人兼務役員に支給する使用人分の賞与で一定の要件を満たすものは損金算入となっていました。

2.役員給与のうち損金算入が可能なもの
平成18年度の税制改正において、役員報酬や役員賞与といった法人が役員に支給する給与は、法人税法で「役員給与」として一括して規定が設けられました。
この改正の背景として、会社法第361条(取締役の報酬等)に「取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益」という規定が設けられ、役員報酬や役員賞与がこの規定に照らして職務執行の対価として取り扱われるようになったことや、企業会計上も「役員賞与に関する会計基準」(企業会計基準委員会、平成17年11月29日)において「役員賞与は、発生した会計期間の費用として処理する」とされたことが挙げられます。
上記の「一括して規定が設けられ」たというのは、平成19年4月以後に始まる各事業年度において、「法人が役員に支給する給与」のうちで、定期同額給与、事前確定届出給与、利益連動給与のどれにも当たらないものは、損金算入されないと規定されたということです(ただし、同族会社は、利益連動給与を損金算入することができません)。定期同額給与、事前確定届出給与、又は利益連動給与に当たるなら、不相当に高額な部分の金額を除き損金算入が可能です。
そして、定期同額給与、事前確定届出給与又は利益連動給与に当たるための要件を次に説明します(ただし、不相当に高額な部分を損金算入することはできません)。
(1)定期同額給与
・支給時期における支給額が原則として事業年度を通じて同じ額である(ただし、著しい業績悪化による減額といった場合に関する一定の例外規定も存在します)。
・支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである。
・事前の規定がある(その内容につき議事録等の作成が必要です)。
(2)事前確定届出給与
支給額や支給時期が事前に規定されていて、所轄税務署長にその内容に係る届出書の提出をしている。
(3)利益連動給与
・あらゆる業務執行役員に支給する。
・支給限度額の規定がある。
有価証券報告書に記される利益に係る指標を基礎とした客観的な算定方法である。
・あらゆる業務執行役員に関して同一の算定方法である。
・同族会社ではない。  等
医療法人の場合、利益連動給与に当たるための要件を満たすとは考えられません。
利益が発生したことにより事業年度の途中において増額する役員給与は、定期同額の要件に該当せ
ず、全額が損金に算入されません。損金に算入できる役員給与は、相当限定されています。

3.役員給与から除外されるもの
(1)退職給与、(2)法人税法第54条第1項に定める新株予約権によるもの、(3)(1)・(2)以外のもので使用人兼務役員に支給する使用人としての職務に対するもの、(4)法人が事実を隠ぺいし又は仮装して経理することでその役員に支給するものは、上記2で述べた「法人が役員に支給する給与」から除外されます。
なお、上記(1)の退職給与は役員給与には当たらないものの、以前と同じように「不相当に高額な部分の金額」を除き原則として損金算入が可能です。

4.使用人兼務役員の要件
上記3で述べたように、役員給与のうちで、使用人兼務役員に支給する「使用人としての職務に対する部分」にこの規定が適用されることはありません。
医師以外の役員に関しては、使用人兼務役員といえる人も存在するのではないかと思われます。理事長の奥様も、使用人兼務役員に当たるケースが存在しますから、注意しなければなりません。
役員のうち、部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を持ち、かつ、常時使用人としての職務に従事する人のことを、使用人兼務役員と呼びますが、次の役員は使用人兼務役員に当たりません(法人税法施行令第71条)。
(1)代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
(2)副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位にある役員
(3)取締役(委員会設置会社の取締役に限定されます)、会計参与及び監査役並びに監事
(4)合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
(5)同族会社の役員のうち一定の要件に該当する役員
医療法人は医療法に基づき設立された法人で、医療法上、剰余金の配当の禁止が規定されていること等から、会社法に基づき設立された営利法人とは違い、同族会社には当たりません。したがって、上記(5)は、医療法人とは無関係です。
実務上、役員の職務内容、他の使用人の給与、医療法人の収益状況に応じて、どの程度の役員給与が適当なのかが決定されます。

5.医師である理事の給与の決定におけるポイント
(1)常勤なのか非常勤なのか、職務内容に則した給与なのか
非常勤の理事に高額を支給したら、否認される恐れがあります。
(2)他の使用人の給与や医療法人の収益状況との比較
他の使用人の給与と比較して極端に高額すぎないか、法人の決算内容と比べて不自然な支給額ではないか等について判断します。
(3)同種同規模の医療法人の役員給与との比較
同種同規模の医療法人の役員給与と比較して極端に高額すぎると、否認される恐れがあります。(院長が他の法人の役員給与を知らないのが一般的ですから、事例を数多く把握している顧問税理士等に相談されるといいでしょう)。

6.医師を除く理事の給与の決定におけるポイント
基本的に、上記5で述べた医師である理事の給与の決定におけるポイントと同じですが、医師である理事の給与より医師ではない理事の給与が高いというケースはほぼ存在しないといえますので、注意を要します。

種類株式の活用方法について、説明してください。

 

<解答>
会社法におきましては、様々な特徴を持っている複数の種類の株式を発行することが可能になります。この「種類株式」をうまく活かすことができれば、事業承継に役立てることが可能になります。

<解説>
(1) 配当優先・無議決権株式の活用
会社法におきましては、非公開会社において、発行制限なしに配当優先・無議決権株式を発行することが可能になります。このような株式を発行する目的のためにも、株主総会の特別決議(※)によって、その内容を定款に定めなければならないでしょう。

※ 特別決議・・・議決権の過半数を有している株主が出席しまして、出席株主の議決権の3分の2を超えている場合によって、決議されることになります。

☆後継者に議決権を集中させることが可能になります。
・ 次男につきましては、議決権がない代わりに配当を優先的に受けることが可能になるため、不満を抑えることが可能になります。
・ 後継者である長男は、議決権を100パーセント保有することになりまして、会社の実権を握ることが可能になります。

☆ 従業員持株会の株式を配当優先・無議決権株式に変更することになるでしょう。
・ 結果として、オーナーの議決権割合が2/3を超えることになります。
(注)既存の株式の一部を変更する場合におきましては、株主総会の特別決議に加えまして、全株主の同意が必要になってしまいます。

(2) 黄金株の活用
黄金株とは、取締役会や株主総会の決議事項に対しまして、一定の拒否権が認められた種類株式になります。

☆ 株式移転後もオーナーの影響力を残すことが可能になります。
・ 後継者の独断専行経営を防止することが可能となります。

(3) 相続人などに対する売渡請求権の活用
相続や合併などによりまして、その会社の譲渡制限株式を取得した者に対しまして、その株式を、発行会社に売り渡すことを請求する旨を定款で定めることが可能になります。

【注意点】
(1) 売買価格
売買価格につきましては、当事者間の協議によることになるようですが、不調の場合に関しましては、売渡請求日から20日以内に限って、裁判所に価格決定の申し立てが可能になるでしょう。

(2) 売渡請求期限
相続等が存在したことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議を経まして、請求しなければならないでしょう。

(3) 財源規制
分配可能額を超えてしまう買取は不可能になってしまいます。

☆ 株主の分散を防止することが可能になります。
・事業運営上、好ましくない者への株式の移転を防止することが可能になり、経営を安定させることが可能になるでしょう。

企業にとって、内部統制はなぜ重要なのですか?

 

日本の会社にはルールが少なく、「俺がルールだ」というオーナー会社が多数見受けられますが、日本版SOX法に対応するには、まず、内部統制というのはどういうことかを認識する必要があります。内部統制とは、ルールにのっとって組織が適正にコントロールされているか否かをチェックする仕組みのことです。

上場企業にとって内部統制が重要であるのは、「時価総額の向上」とコインの表裏の関係にある「CSR(企業の社会的責任)の向上」を実践しておかなければ、企業の突然死が起こり得るからです。 時価総額と内部統制はコインの裏表だと考えることができ、時価総額経営を攻めの経営だとすると、内部統制は守りの経営だといえます。スポーツにおいても、試合に勝つには攻守のバランスが大切です。

内部統制は、金融商品取引法に規定されたから行うというのではなく、新会社法においても規定されたように、経営者や経営に欠かせない制度だと考えることが重要です。

内部統制の目的については、全て同時にその達成を目指せばいいのでしょうか?

 

Q.内部統制の目的については、全て同時にその達成を目指せばいいのでしょうか?

 

A.内部統制は範囲がとても広く、新会社法内部統制も、金融商品取引法(日本版SOX法)の内部統制も、いずれも重要です。しかし、同時に全てを行うことは難しく、とりわけ中小、中堅企業にとっては不可能に近いといえます。それゆえ、第一に両方の違いを認識することが、実務上、とても大切です。

会社法には、四つの基準、四つのカテゴリー、四つの目的があります。その四つとは、法令順守、業務の有効性と効率性、資産の保全財務報告の信頼性です。一方、金融商品取引法については、財務報告の信頼性のみです。したがって、新興市場や中小、中堅の上場企業にとっては、財務報告の信頼性を確実なものにしてから順次ほかの三つを達成していくのが、実務的でコストも抑えられるので適していると思われます。

上場企業は「有価証券報告書」を提出する分に関して「内部統制報告書」を確実に提出しなければなりません。財務報告の信頼性を第一に押さえる必要があると考えるのです。

日本版SOX法における内部統制制度の概要を教えてください。

 

Q.日本版SOX法における内部統制制度の概要を教えてください。

A.会社法において定められている内部統制システムに関しては、大会社であれば取締役会でその構築方針を決定する必要があります。「損失の危機の管理に関する規程その他の体制」(会社法施行規則第100条第1項第2号)は、リスク評価と対応に当てはまり、債権者保護という会社法の趣旨から極めて大切です。また、「取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制」(会社法施行規則第100条第1項第3号)については、「取締役」と定められていますが基本的には業務効率の部分といえます。そして、「使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制」(会社法施行規則第100条第1項第4号)については、コンプライアンスに該当します。最後に、「当該株式会社並びにその親会社及び子会社から成る企業集団における業務の適正を確保するための体制」(会社法施行規則第100条第1項第5号)は、財務報告資産の保全等の広範囲の内部統制に該当します。

したがって、いわゆるCSOキュービック全体が会社法で定められているといえます。そこから財務報告の部分を抜き出したものが日本版SOX法です。

内部統制に関しては、有価証券報告書に係る適正性の確認書が、内閣府令や東証で要請されていました。さらに、金融商品取引法で、財務報告に係る内部統制の有効性を評価した結果を外部に報告する、日本版SOX法の制度が導入されました。日本版SOX法は、金融商品取引法の中で定められていて、同法における「開示制度の整備・強化等」の部分です。その目的は、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制の評価制度の整備です。

日本版SOX法の具体的な内容については、構成としては次の三つとなっています。

内部統制の基本的枠組み

財務報告に係る内部統制の評価と報告

財務報告に係る内部統制の監査

そして、制度スキームとしては、次の五つとなっています。

財務報告に係る内部統制の構築

財務報告に係る内部統制の有効性の(経営者による)自己評価

財務報告に係る内部統制報告書の(経営者による)作成と公表

・外部監査人による監査の実施

財務報告に係る内部統制監査報告書の作成と公表

日本版SOX法への対応として内部統制を見直すに当たり、業務改善も図るのであれば、巨額の費用がかかってしまうでしょうか?

 

Q.日本版SOX法への対応として内部統制を見直すに当たり、業務改善も図るのであれば、巨額の費用がかかってしまうでしょうか?

 

A.内部統制の見直しについては、ITシステムの更新時に旧システムで行っていることをそのまま新システムでも行おうとしても、システム変更が期待したほどの業務改善につながりません。また、戦略的業務改善活動(以下「BPR」といいます。組織間の垣根をなくして全社的に最適な業務処理を構築していこうという活動のことです)は、業務効率アップ等につながる魅力的な活動であるものの、効果が測定しにくいことや費用が不明であること等から導入に踏み切れなかったりした会社が多かったことと思われます。

しかし、金融商品取引法と新会社法において、内部統制の全般的な見直しをしなければならなくなりました。法が規定することであるため、必ず行わなければならないことから、この機会に業務活動の改善もしたい、内部統制の四つの目的のうち業務の有効性、効率性も高めたいと考える場合も少なくないのではないでしょうか。ただし、この場合は費用の壁が立ちふさがる可能性があります。やるべきことはBPRと類似していますので、費用はもちろんかかってきます。財務報告の信頼性のみを文書化する場合には例えば3,000万円かかるとすると、2~3倍かかってしまうかもしれません。

そこで、対応策の一つを述べます。あくまでも、「財務報告の信頼性」の確保を目標とします。ただ、文書化作業の過程で他の目的に関係するリスクを発見できることがありますが、会社がそのようなリスクにつきコントロールがなされていないと不備を認識したなら、その情報を通常の財務報告プロジェクトとは違ったルートで吸い上げ、リスク管理部門に報告を行います。リスク管理部門においては、その報告されたリスクに対して優先順位を付け、アクションプランの検討を行います。このような二本立ての対応なら、十分に実現できるのではないかと考えます。

例えば、請求書の発行を漏らすというのは、財務報告に関係するリスクとはいえません。厳密にいえば資産保全に関係しますので、文書化の対象にはなると思われます。しかし、仮に財務報告の信頼性に関係するリスクに限って述べると、請求書を発行してもしなくても、これは会計取引には該当しませんので仕訳を切らないことから、財務報告の数字に影響が及びません。ただし、請求書を発行しなければお金が入ってきませんので、資金繰りに困ります。これは、ビジネスとしては多大な損失となるでしょう。このようなリスクを、財務報告に関係するリスクではないことを理由に放置しておくか、リスクと考えてアクションプランを検討して企業として対応していくかでは、大きな差が生じるのではないでしょうか。

上記のような対応が実際に極めて有効であると思われますが、作業者の内部統制についての知識や経験が不可欠であるということが、問題となります。リスクをリスクとして作業者がとらえることができるか、スルーしてしまうかによって、この活動の有効性に大きな差異が生じてしまうでしょう。

私は40年近く小さな規模の会社を経営していました。将来のことを考えて、私が死んだあとには息子に譲ろうとしています。この場合で、息子に適用することが可能な制度にはどのようなものがあるのでしょうか。

 

相続税の納税猶予の制度があります。この制度は、ある後継者が相続などによって、非上場会社の株式などを先代の経営者から獲得して、その会社を経営し始める場合は、その経営を承継した人の相続税の中で、その非上場会社に関わる課税価格の8割相当の相続税の納税を猶予してもらえるものです。
その経営の承継相続人が亡くなった場合などは、その一部や全部が免除されることとなると同時に、免除される際まで特例の対象になった非上場株式などの譲渡等の一定の場合は、猶予されている株式の納付猶予税額の一部や全部を利息税と共に納付しなければなりません。

この特例の適用対象になるためには、その会社が「中小企業における経営の承継の円滑化に関わる法律」に従って、会社が経済産業大臣から認定を受けなければなりません。この認定のためには、相続を開始する日から8カ月以内に申請をしてください。

*2013年4月1日の前に申請をする際の、「中小企業における経営の承継の円滑化に関わる法律」の施行規則の一部の改正の省令による改正前の「中小企業における経営の承継の円滑化に関わる法律」の施行規則によって任税を受ける場合には、前もって経済産業大臣の確認を貰うことが必要です。詳しくは、際寄りの地方経済産業局でご相談ください。

1. 会社に対する主な要件
(1) 経済産業大臣の認定を貰った中小企業者
(2) 常時に使用している就業員が一人を超えていること:一定の外国会社株式などを持っている場合は五人以上
(3) 資産運用型会社や資産保有型会社で、一定のものに当てはまらないこと
(4) この会社の株式などや特別関係にある会社の中で、この会社と密接な関係のある一定会社の株式が非上場株式などであること
(5) この会社の特定の特別関係の会社が中小企業者であること
(6) この会社と徳手宇野特別関係の会社が風俗営業とは関係のないこと
(7) 相続が開始する前の3年以内に貰った現物出資など資産の割合が総資産の7割を超えないこと
(8) 経営承継相続人以外の人が会社法第108条第1項第8号の定めによる種類の株式(拒否権がついている株式のこと)を持っていないこと
(9) 相続開始日の含まれる事業年度の直前の事業年度の総収入の金額が0ではないこと

2. 先代の経営者である被相続人に対する要件
(1)相続開始の前にどちらかの日に、会社の体表権を持ったことがあること
(2)相続の開始の直前に、被相続人と特別な関係のある人と被相続人本人で、総議決権数の半分を超える議決権数を持っていると同時に、被相続人が持っている議決権数が経営承継相続人などを除外したこれらの人の中で一番多くの議決権数を持っていたこと

3. 経営承継相続人などに対する要件
(1)被相続人と親族の関係であること
(2)相続が開始する直前に役員であったこと:被相続人が60歳以前に死亡した場合は除外
(3)相続が開始する日の次の日から5カ月が過ぎた日において、会社の体表権(制限つきの体表権は除外)を持っていたこと
(4)相続人と特別な関係にいる人や相続人本人で、総議決権数の半分を超える議決権数を持っていると同時に、これらの人の中で一番多くの議決権数を持っていたこと
(5)相続税の申告の期限までに特例の適用対象を貰う非上場株式などの全部を持っていること

この特例の対象に含まれる非上場株式などの数は、以下の(1)(2)(3)の数からAかBの区分の場合の対する数が限度とあります。
(1)経営承継相続人などが相続などによって獲得した非上場株式などの数
(2)経営承継相続人などが相続の開始前から持っている非上場株式などの数
(3)相続が開始する時の発行済み株式などの総数
A(1)+(2)<(3)X 2/3 →(1)
B(1)+(2)<(3)X 2/3 →(3)X 2/3 -(2)

この特例で納税を猶予してもらえる相続税の額数は、AからBを引いた残額とはります。AとBの税額を算出する場合の経営承継相続人などの以外の人が獲得した財産は、実際に経営承継相続人以外の人が相続などによって獲得した財産によって異なります。
1.経営を承継する相続人などが獲得した財産が、特例の適用対象になる非上場株式などだけであるとみなした場合に計算されるその相続人などの相続税額
2.経営を承継する相続人などが獲得した財産が、特例の適用対象になる非上場株式などの2割のみであるとみなした場合に計算されるその相続人などの相続税額

*その非上場株式などが発行される会社と、その会社と特別の関係にある一定会社が、一定の外国会社や医療法人の株式などを持っている場合は、その猶予される税額の算出の基になる非上場株式などの価額は、その医療法人や外国会社の株式などを持っていなかったものとして算出します。

この特例の適用対象になるために、特例を受けるという内容を記した相続税の申告書を決められた申告期限まで提出すると同時に、特例の適用の要件を確かめる一定の書類を添えることが必要です。
なお、申告書の提出の期限までに、非上場株式などの納税猶予税額とその利子税額に見合う担保を提供しなければなりません。この非上場株式などの全部を担保として提供した時は、納税猶予の適用を受ける相続税額と利子税額に見合う担保の艇庫湯をしたとみなされることになります。

継続して特例の適用を受けたい場合は、その内容と、特例適用の対象になる非上場株式などに関わる会社の経営などの事項を書いた「非上場株式などについての相続税の納税猶予の継続届出書」を、相続税の申告期限を過ぎた後の5年間は毎年に、5年を過ぎた後は3年ごとに管轄税務署長宛てに出してください。
この継続届出書を出してない場合は、特例の適用が途中で打ち切りとなり、猶予してもらった税額とその利子税を納めなければなりません。

猶予税額を納めることが免除される場合もあります。以下の項目に当てはまる場合です。
1.経営を承継する相続人の死亡:死亡した日から6カ月が過ぎた日までに「免除届出書」を先代の経営者の相続税の管轄税務署長宛てに提出してください。
2.申告期限から5年が過ぎた後に、特例の適用対象になった非上場株式などを一定親族に贈与して、その親戚が「非上場株式などに関する贈与税の納税猶予」の適用対象になる場合
3.申告期限から5年が過ぎた後に、以下の項目に当てはまる場合
(1)経営を承継する相続人などが特例の適用対象になった非上場株式などに関する会社の株式などの全てを贈与・譲渡した場合
(2)特例の適用対象になった非上場株式などに関する会社に関して、破産手続きの開始の決定・特別清算の開始の命令があった場合
(3)特例の適用対象になった非上場株式などに関する会社が合併によって消滅した場合で、一定のもの
(4)特例の適用対象になった非上場株式などに関する会社が株式交換などで他の会社の株式交換完全子会社などになった場合で、一定のもの

最後に、納税猶予税額を納めることになる場合は、以下の項目に当てはまる場合となります。
1. 非上場株式などの納税猶予となった税額を納めなければならないケース
(1) 申告の期限から5年以内に、経営を承継する相続人が代表権を持っていないことになった場合
(2) 申告の期限から5年以内の一定の基準日に、常に使用する従業員の数が相続が始まった日の数の80%を下回る場合
(3) 申告の期限から5年以内に、経営を承継する相続人とその相続人と特別な関係にある人が持っている議決権数の合計が総議決権数の半分を超えなくなった場合
(4) 申告の期限から5年以内に、経営を承継する相続人と特別な関係にある人の中のひとりが、経営を承継する相続人などを超える議決権数を持つようになった場合
(5) 経営を承継する相続人などが特例の適用対象になった非上場株式などの一部や全部の譲渡などを行った場合
(6) 特例の適用対象になった会社が解散したとみなされる場合や実際に解散した場合
(7) 特例の適用対象になった会社が資産運用会社や資産保有型会社で一定のものに当てはまることになった場合
(8) 特例の適用対象になった会社の事業年度での総収入金額が0になった場合
2. 納めることになる税額に関する利子税
上記の1のことで納める相続税の額数は、相続税の申告期限の次の日から納税の猶予の期限までの期間に対して年3.6%の利子税が賦課されます。
しかし、各年の特例の基準割合が7.3%を超えない場合は、以下のようになります。

3.6%X特別基準割合/7.3%

*特別基準割合が4.3%の場合は、2.1%となります。
なお、これらの割合には日日によって変動する場合もありますので、際寄りの税務署とご相談ください。

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