財務報告に係る内部統制構築のプロセスについて、内部統制の報告までの具体的な流れを教えてください。

 

財務報告に係る内部統制構築のプロセスについては、一般的な手続きとしながらも実施基準案において明示されています。とりわけ、財務報告に係る具体的な内部統制の構築について、重要になることとして、次に掲げる項目が挙げられています。

・適正な財務報告を確保するための全社的な方針や手続が示されるとともに、適切に整備及び運用されていること

財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクへの適切な評価及び対応がなされること

財務報告の重要な事項に虚偽記載が発生するリスクを低減するための体制が適切に整備及び運用されていること

・真実かつ公正な情報が識別、把握及び処理され、適切な者に適時に伝達される仕組みが整備及び運用されていること

財務報告に関するモニタリングの体制が整備され、適切に運用されていること

財務報告に係る内部統制に関するITに対し、適切な対応がなされること

経営者は、上記のようなことを念頭に置き、具体的には次のプロセスによって、財務報告に係る内部統制を構築していきます。

・基本的計画及び方針の決定

内部統制の整備状況の把握

・把握された不備への対応及び是正

 

1.基本的計画及び方針の決定

内部統制は、経営者の一貫した方針に沿って構築される必要があります。したがって、経営者は、内部統制の基本方針に係る取締役会の決定を基に、それを全社的なレベルや業務プロセスのレベルにおいて行うための基本的計画と方針を決めることとなります。このことで、事前に内部統制報告書により評価されるべき範囲を明らかにすることが可能であり、経営者はその範囲内で財務報告に係る内部統制を構築していくこととなります。決めておく内容は、具体的には次のような内容です。

・適正な財務報告を実現するために構築すべき内部統制の方針・原則・範囲・水準

内部統制の構築を担当する責任者以下の責任者と全社的な管理体制

内部統制の構築に要する日程と手順

内部統制の構築に係る各々の手続に関わる人員とその編成、事後の教育・訓練の方法等

 

2.内部統制の整備状況の把握

内部統制の基本的計画と方針が決められた後、組織においては内部統制の整備状況を把握して、その結果を記録・保存します。経営者と内部統制の構築に責任を持つ人の指示を受けながら、全社的なプロジェクトとして、この作業を行うこととなります。

(1)財務報告に係る全社的な内部統制

既存の内部統制についての規程、慣行及びその遵守状況等を基に、全社的な内部統制の整備状況を把握して、記録・保存を行います。とりわけ、暗黙のうちに行われている社内の決まりごと等が存在する場合は、それを明文化することが大切です。

(2)財務報告に係る重要な業務プロセスにおける内部統制

組織における重要な各業務プロセスにつき、取引の流れや会計処理の過程を、必要であれば図表を用いて整理し、把握します。各業務プロセスにつき、虚偽記載の生じるリスクを判別し、そのリスクがどのような財務報告か勘定科目と関連があるのか、また、判別されたリスクが業務に組み込まれた内部統制により十分に減らせるものとなっているのかを、必要であれば図表を用いて検討します。

このための参考として、実施基準案ではいわゆる3点セット(「業務の流れ図(フローチャート)」、「業務供述書」、「リスクと統制の対応」)が例示されています。内部統制の文書化作業は、これらのツールを活用しつつ実施していきます。

 

3.把握された不備への対応及び是正

内部統制の整備状況を把握する過程で把握された内部統制の不備については、適切な対応を図る必

要があります。経営者と内部統制の構築に責任を負う人は、内部統制の基本的計画と方針を基に、不

備の是正措置を講じることとなります。

金融商品取引法における内部統制報告制度は、財務報告の信頼性を確保することを目的としていて、

財務報告に係る内部統制の不備は、内部統制報告より前に、適切な対応・是正がなされていなければ

なりません。経営者は、内部統制報告を行うまでに、自社における内部統制が有効なものになるよう

改善していくということになります。

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